歳時記 「夕立」

雨上がりの参道

雨上がりの山門

九品仏浄真寺の境内



 

歳時記 ”夕立”

 季語など吹き飛んでしまうような昨今の気候です。日本らしい四季の移ろいをゆっくり味わう間もなく、夏と冬だけになってしまうのではないかと思う日さえあります。俳句に欠かせない季語を集めた歳時記も、このままでは開かなくなってしまいそうです。

 そんなことを思っていた矢先、午後三時ごろの土砂降りの夕立です。土砂降り、雷の音の大きさに風情を味わう余裕などありませんでした。

 雨が上がって散歩に出ると、お寺の境内は洗われたように光っていました。木々の葉はみずみずしく、石畳まで輝いて見えます。その景色に出会うと、「久しぶりに歳時記でも開いてみようかな」という気持ちになりました。

 歳時記をめくると、「返り梅雨」「送り梅雨」という言葉が目に留まりました。さらに「夕立」の頁を拾い読みしていると、

夕立や われは真鶴 君は鷺

という芥川龍之介の句に出会いました。

 けぶるような夕立の中、真鶴と鷺がそれぞれ静かに川面を見つめている情景が浮かびます。詞書には「輿茂平さんに代わりておたまさんに」とあります。恋の句なのだろうか、同じ鳥でありながら、生きる世界は違うということの暗示なのだろうか。そんなふうに想像を巡らせるのも俳句を読む楽しみです。そう考えると、この芥川の夕立もまた、かなりの土砂降りだったのかもしれません。

 気候変動によって四季が失われていくとしても、歳時記の中では季節の移ろいは静かに息づいています。私たちがページを開くたびに、日本人が見つめてきた季節は、これからもひっそりと生き続けるのでしょう。

 歳時記では、立夏(5月6日)から 立秋(8月7日)までが夏。そろそろ暦の上では秋なのです。



 

コメント

  1. この緑イイですねぇ。びっしょり濡れた石畳を覆う緑、人気も無く…ひんやり感が伝わり、一服の涼❢

    返信削除

コメントを投稿