伝「旅懐」 ー小さな作業の積み重ねが枕屏風を復活させるー

 

枕屏風「旅懐」

神奈川県金沢区地区センター「余暇室」 12:00から15:00 

指導 表具師 平野佳一

2025.2.10    枕屏風の採寸   





2025.3.10        枠を外す 屏風本体右左のずれの調整 紙丁番
2025.4.28        紙丁番 下張りの穴をふさぐ 
  
2025.5.12        紙丁番の補強 本紙をはずす
2025.6.19    本紙 裏打ち2回して仮張りに貼る 下張り用和紙の裁断
2025.7.14       本紙3回目 下張り2回
2025.10.13     枠の補修
2025.11.10 本体の裏表を貼る






2025.12.11 帯の裁断 仮張りから本紙をはがす。
2026.1.26      本紙の裁断と縁取り(薬袋紙)
2026.1.26      本紙を定位置に貼る 枠を取り付ける 背の紙丁番に背紙を貼る
       止め切り包丁で 紙丁番の上に貼った背紙に切れ目をいれる。

枕屏風の修復で気が付いたこと
 ・最初が肝心
 ・1寸の虫にも5分の魂 正確に測らないと後の辻褄が合わなくなる
 ・糊の性質で使い分ける
 ・和紙の伸びを知る
 ・本紙を生かす裏打ち(本紙は、端がぼろぼろになってしまったが3回裏打ちして補強)
 ・刷毛は、しなやかに

本紙「旅懐」
 
  月華星彩坐来収 (げっかせいさい そぞろに来ればおさまる)
  獄色江声暗結愁(がくしょく こうせい 暗に憂いをむすぶ)
  半寄燈前十年事(半夜(はんや)のとうぜん 10年のこと)   
  一時和雨到心頭(いちじの雨に和して心頭(しんとう)にいたる)
                      杜筍鶴:詩 
                      金安菱雅 : 書
    
 
 枕屏風は、寝所におく屏風である。木造の建築の隙間風を防いだり、目隠しの目的に使うものだ。母が自分の書道作品を40年ほど前に枕屏風に仕立てたのを表具師平野氏の指導のもとで修復に挑戦した。1年かかってしまった。要所要所を抑えてもらい満足のいく枕屏風に仕上がった。
 師匠は、私に失敗させないように、急がずワンステップづつ丁寧に教えてくださった。
和紙の日常用品を修復しながら長く使う文化や技術があることを知って、改めて日本人ってすごいなと感じ入った。
 母の筆は、勢いがあるので枕屏風に適切かどうかわからないが、「旅懐」の漢詩の意味は、夜空の星月の光が座っているうちに消え、急に曇って雨がふりだす。その物寂しさの旅の夜、しんみり過ぎ去り日を述懐する気持ちになって心静まるものがあるというもの。朝、目に入る部屋の空気が新鮮に見えるのは、枕屏風のきっちりした佇まいのお蔭のように思う。
 一つ一つのプロセスに手をつくして積み上げてゆく表具の仕事が、私は好きである。





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